シンセサイザーなどの電子楽器には、大きく分けると「アナログ」と「デジタル」の2つの方式が存在します。

アナログシンセサイザー」は、トランジスタやコンデンサーといった電子部品を使って音を作る方式です。一方の「デジタルシンセサイザー」は、DSPと呼ばれるチップやパソコン等のCPUによる演算で音を作り出す方式です。ちなみに、前回紹介した「サンプリング」はデジタル処理に含まれます。

最近は、従来専用のハードウェアで行われていたデジタルシンセ処理のほとんどがパソコンのCPUで可能になっているので、製品、フリーウェアの両方で「ソフトウェアシンセサイザー」が非常に数多く出回っています(もちろん、ソフトシンセはデジタルシンセの一種です)。

両者を比べると、デジタル方式の方が動作が安定しており、低コストでより多くの機能を詰め込めます(「フィルムカメラとデジカメ」「タイプライターとワープロ」などと同じ図式ですね)。アナログのシンセサイザーはサイズや消費電力も大きくなりがちで、また電圧等の影響で音程が狂いやすいなど不安定な性質を数多く持っています。

それではアナログシンセは前時代の遺物なのか?というと、そんな事はありません。アナログシンセの音色には「太さ」「暖かさ」と呼ばれるような質感があり、音楽を奏でる楽器として見た場合それらは大きな魅力として作用します。デジタルシンセでもアナログシンセの特徴をかなり再現できるようになっていますが、現在のコンピュータの性能を持ってしてもなかなかカバーできない領域があります。

また、先述したような「不安定さ」も、音楽的に見れば「欠点」とは言い切れません。ピアノ、ギター、バイオリンといった生楽器の音色は、演奏する環境(演奏者とその体調、部屋の構造、湿度や温度など)によって変化します。デジタルシンセの安定感は、見方によっては「いつも同じでツマラナイ」とも解釈できます。

実際には、アナログシンセの中にも一部デジタル処理が使われているものも多く、またデジタルでしか出せないサウンドというのも数多くあります。あまりアナログ、デジタルに固執するのはナンセンスですが、アナログシンセの魅力というのはまだまだ追求の余地がある大変奥深いものです。

最近、大手のメーカーも含めてアナログシンセの製品開発が大変活発になっています。一般には1980年代の初頭を境に「アナログの時代/デジタルの時代」と分けることが多いものの、レコーダーなどにおいてもデジタル機器がかつて無い領域のクオリティに達している現在こそ、アナログの魅力もかつて無いレベルで引き出すことが可能になっていると言えるでしょう。

我々は、アナログ、デジタルの枠を全て包み込んだ、かつて無い電子楽器の進化系を目撃できる大変魅力的な時代に生きているのです!
(解説:大須賀淳

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