よく「モジュラーシンセやアナログシンセ=ヴィンテージ(骨董品的な)シンセ」という認識を目にします。

確かに、アナログシンセが登場〜全盛期を迎えた1960年代末〜80年代初頭の間には、名機と呼ぶにふさわしいサウンドやルックスを持ったシンセが数多くありました。そして、80年代中期にデジタル方式のシンセが台頭すると、アナログシンセの新機種や、多くのメーカーまでがほとんど消滅してしまいました。

1990年代に入ると、特にテクノ系アーティストの影響で、彼らが使用していたアナログ系のシンセが再び注目を集めます。それと同時に、一時は二束三文で扱われていた往年のシンセにものすごいプレミア価格が付くようになりました。再びアナログの新製品も出始めましたが、まだ数や種類も豊富ではありませんでした。

こうした流れが主な要因となって「アナログやモジュラーのシンセは高価なヴィンテージ品」という意識が根付いてしまった経緯があります。

しかし、それを覆す流れが徐々に生まれ始めます。ここで最重要な存在なのが、ドイツの「Doepfer」(ドイプファー)というメーカーです。Doepferは1994年に「MS-404」という1Uラックサイズのアナログシンセを発売し、これはテクノ系ユーザーを中心に大ヒットしました。そして1995年、現在も続くアナログモジュラーのシリーズ「A-100」の販売を開始したのです。

A-100は、それまで巨大になりがちだったモジュラーの筐体に対し「ユーロラック」という比較的コンパクトなサイズを制定。同時に、標準フォン接続が多数派だった所を、ミニジャック接続基本にデザインしました(2013年にKORGが、往年のシンセMS-20を75%にダウンサイズしたMS-20miniを発売したのとほとんど同じ構図です。間違いなくDoepferの影響があったでしょう)。さらにDoepferのモジュールは、扱いやすいだけでなく技術やパーツの進化などから、往年の機器より飛躍的に安定性が向上し、単なる焼き直しに留まらない素晴らしい音質も備えていたのです。

A-100シリーズが充実度を深めるに従い、他のメーカーもユーロラック互換のモジュールを次々とリリースするようになりました(現在ではデファクトスタンダート(事実上の標準)となっています)。そして、2010年代に入ってからのアナログ再評価は、鍵盤型のシンセと共に、ガレージメーカーも含めたユーロラックモジュールのビルダーも爆発的に増加させています。モジュラーシンセ・日本ではモジュールメーカーのリスト化を進めていますが、2014年初頭の段階で約150程度確認しており、未だ把握できていないメーカーや、新規のメーカーも続々増えるといった状況になっています。

モジュラーシンセに限って言えば、現在が歴史上一番充実している時代です。各メーカーのモジュールを合計すれば数千種類をくだらないわけで、その組み合わせは天文学的な規模の可能性を持っていると言えます。

また、現在は個人宅の環境でも、96(または192)KHz/24bitやDSDといった高音質な録音フォーマット(最近の言葉で言えば「ハイレゾ」)が扱えます。アナログシンセのサウンドは(CDフォーマットの限界を軽く超えるほど)非常に豊富な成分を含んでいるので、やっとアナログシンセが本来持っていたポテンシャルを十分に活かせるようになったのです。

私は往年のシンセにも好きな機種が沢山ありますが、モジュラーやアナログシンセが「懐かしもの」「一部のマニアのもの」になってしまうのには強い警戒感があります。21世紀のアナログは、最先端表現のためのツールとして、表現者にとっては例えば(21世紀の技術である)VOCALOIDなどに十分比類する未知の可能性を持っていると感じています。
(解説:大須賀淳

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